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2022年5月13日 (金)

I gave up.

05131_20220514091101 1月くらい前に何か変な感じと書いていたBOSCHのオルタネータ。一応レギュレータを新作して納品していた。そしたら今度は低回転時の発電不良で再入庫。
 前回は過充電という話だったので、それ以外は発電して居るかどうかしか見ていない。そして今は回転数に応じて出力を定量的に測定出来る様な機器は持って無い。
05132_20220514091101  でも依頼者は電圧を詳細に測定したり出来る人で言うことに信頼性はありそう。そして過充電していたレギュレータではもっと発電して居たと言う話も。
 簡易的な試験をしながら色々と考えたけど、このオルタネータはチャージランプ経由の電流と残留磁気を元ネタにしてブートストラップ的に初期の電圧を立ち上げて行くタイプ。時にはチャージランプをLEDにしたら立ち上がらない様な事も有る。
 まあ今回は立ち上がって居るけど、もしかしたらそのタイミングが遅いのかもしれん。そう考えてバッテリからフィールドコイルに直接電圧を持って来るブースタ回路を追加して見た。
05133_20220514091101  そして再測定。カッコイイ発電機試験機は製作中なので旋盤を利用した簡易測定。
 ブースタ回路無しなら600rpmから800rpmくらいで出力電圧が12V位に一気に上昇していた。この状態はレギュレータを無しで短絡したときでも、過充電するオリジナルのレギュレータでも、私が再制作した新作レギュレータでも違いは無い。と言うか立ち上がりのタイミングが毎回バラバラでそちらの変化の方が支配的で違いが解らん。
05134  ところが、ブースタ回路を追加したら200rpmくらいで安定して12Vに出力が立ち上がる様になった。素晴らしい、私の予想が当たったのか?。



05135  バッテリ端子ではバッテリ電圧とかバッテリの充電状態に左右されるので解らないけど、フィールドコイル励磁用の小ダイオード出力を見ていると電圧がスッと立ち上がるのが解る。上記の200rpmで12V位出る。

05136  でもブースタ回路の200rpmでは出力電流はほとんど無い。まあオリジナルの800rpmでもこれは一緒で、ほぼ電流は出せないけど電圧は出ていてチャージランプは消せる状態。
 もう少し電圧を上げていって1100rpmくらいまで上げると少しずつバッテリに充電していく。
05137  スタート時のバッテリ電圧が12.4Vくらいだったのが、しばらく待つと12.7Vくらいまで上昇した。でもこの回転数だとこの辺りがサチレートする限界で、この状態でヘッドライトを点けたりするとバッテリのみと変わらない位まで電圧が落ちる。
05138  制御を疑ってフィールドコイル制御用FETのドレイン電圧を測定してみた。常に0V近辺と言う事は「最大発電しろ!」と命令を出し続けて居る事を意味する。
 この状態ではノイズが多くて解りにくいので、別途3.0Ωの抵抗を使って試験して見た。するとオリジナルの過充電レギュレータの飽和電圧は291mVに対して新作レギュレータは97mVとこちらの方がより強くフィールドコイルを励磁して居る事が解った。まあ誤差の範囲内で両者に違いは無いという事が解っただけ。
05139  新作レギュレータの低速能力がおかしい訳じゃ無い。極低速をブーストする回路を追加しても、立ち上がりが速くなっただけで低域の出力は増えない・・・まあこれは理屈で考えたら当然だけどね。
 そこで他の部分に不安定な所が無いか見ていく事にした。
051310  一番怪しいと思ったのはダイオード基板。初回にも書いたけど半田鏝を当てたら直ぐに溶ける様な樹脂が使って有る。そしてこの写真の白い線の下にプリント基板的な薄いパターンが有り、そこをダイオード電流というか出力電流が流れる。
051311 うーん、特に焼けた様な箇所は無いけど、一部にカバーした樹脂が溶けて盛り上がった様な感じの場所がある。良くわからんけど念のために補強回路を別の線で追加した。
 で、この状態で試験したけど予想通りに何も変わらん。まあそんな気がしていた。でもここまでやってほぼ気持ちが固まった。この発電機の低速発電能力が低いのであろうと。
 依頼者の元でもっと発電して居たと言う話は、低速時のギリギリの所を測定している訳で、バッテリの充電状態や発電機の温度とかでギリギリの遷移点がチラチラ変わって居たんじゃ無かろうか?。若しくは私の気がついて居ない「何か」がある。
 これを一発でサッと証明するには、今製作中の出力まで測定出来る試験機が欲しい。速く作りたいな。

 さて、長くなったけど原因を考えたい。私の勘違いや能力不足を除外すれば、原因として考えられるのは元々が古いポルシェ用なので低速時はチャージランプが消えりゃ良いでしょ?的な製品であった事。
 私が好きなパキスタン辺りの再生工場の動画を見ると、巻き直し後にスタータとかオルタネータの作業時にロータを旋盤とかヤスリで削っている。見た目と組立時の干渉を避ける為と思われるけど、磁気の変化率が減少する方向であるのは確か。
 そして高回転ではレギュレータで押さえる位なので実害は無いけど、低域での発電不良として見えて来るんじゃ無かろうか?と言う想像。
 なんでそんな想像をするかというと、最初の印象とかダイオード基板の作りとか材質とか、各所にこの手の再生工場の匂いを感じるから。
 まあ解らんね。盛大な勘違いをして居るかもしれん。でも今の私の限界である事も確かだし、こればっかりやって居ても他の仕事が進まんのでこの件はギブアップとしたい。

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コメント

社長がギブアップするということは機械的な問題云々というよりも依頼主を気遣った最大の表現であることは依頼者さんは理解してあげてください。

投稿: | 2022年5月18日 (水) 01時01分

 私は気遣いの無い人間なので(笑)、今回の件は低速の立ち上がりと発電能力が911のギリギリの所にあるんだと感じてます。
 でも他の発電機だと行けるので何らかの個体差。。。それの原因の特定と対策が出来なかったのが悲しい。

投稿: みつやす | 2022年5月18日 (水) 07時42分

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