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2020年12月29日 (火)

事故調を出せ

 本報告書の調査は、有限会社ライトスタッフ所属JAXXRSの航空事故に関し、航空・鉄道事故調査委員会設置法及び国際民間航空条約第13附属書に従い、航空・鉄道事故調査委員会により、航空事故の原因を究明し、事故の防止に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない

所属:法人所属
型式:ライトスタッフ式 U200型 (飛行機、陸上単発、無人)
登録記号:JAXXRS
発生場所:福岡県宮若市中有木
発生日時:令和2年12月29日10時02分ごろ

1航空事故調査の経過
 1.1航空事故の概要
 JAXXRSは、令和2年12月29日試験飛行のため機長1名が無線操縦し、福岡県宮若市中有木の農道から手投げにより10時01分ごろ発航し、10時02分ごろ同地の田園内に墜落した。墜落の際刈り取りの終わった地面に衝突し機体を損傷した。
 操縦者の死傷 無し
 航空機の損壊 中破

 1.2航空事故調査の概要
 航空事故調査委員会は、令和2年12月29日、本件が事故に該当する旨の通報を受け、主管調査官1名の航空事故調査官を指名し、直ちに事実調査を開始するとともに、令和2年12月29日に機体調査、令和2年12月29日に現場調査及び口述聴取を実施した。

2認定した事実
 2.1航空機乗組員等に関する情報
 機長 男性62歳
 自家用操縦士技能証明書(滑空機)第(忘れた)号
 限定事項 上級滑空機 昭和54年ごろ
 総飛行時間 忘れた(発航回数 忘れた)
 最近30日間の飛行時間 15時間24分(発航回数62回)無人回転翼機
 同型式機飛行時間 0時間00分(発航回数0回)
 最近30日間の飛行時間 0時間00分(発航回数0回)

2.2航空機に関する情報
 2.2.1航空機
 型式 ライトスタッフ式 U200型
 総飛行時間 0時間00分
 事故当時の重量及び重心位置 265g、96㎜と推算され、許容範囲内と推定される。

 2.2.2航空機各部の損壊の状況
 主な部分の損壊状況は、次のとおりであり、いずれも地面へ衝突時の際に生じたものと推定された。
 1胴体前部 3個に分離
 2主翼 前縁部に泥の付着と2㎜程度の凹部
 3プロペラ 翼端部に泥の付着
(写真1、2、3参照)

 2.3気象に関する情報
 2.3.1事故現場の南南東約14kmに位置する福岡地方気象台飯塚測候所の観測値は、次のとおりであった。
 10時00分天気晴れ、風向南、風速1.6、気温9.5°
 11時00分天気晴れ、風向南、風速1.1、気温11.8°

 2.3.2機長によれば、事故当時の気象は、次のとおりであった。
 天気晴れ、風速1~2、視程10km以上
 場周経路付近は極めて静穏であった。

 2.4現場調査
 2.4.1事故現場の状況
 事故現場は、福岡県宮若市の北部にある田園地帯で、ほぼ平坦な地形の中に数本の農道が通っている。田園には衝突によって生じたと推定される痕跡があった。この痕跡の周辺にも大きな窪みが認められたが、事故機を回収するための足跡で有ると推定される。
 機長の口述によれば事故直後の現場の状況は概略次の通り。機体は、田んぼの中に通常の状態でほぼ水平に停止していた。飛行状態を示すLEDは点灯していたがモータは止まっていた。前部胴体が数個に分離して配線のみで繋がっている状態だったので、配線を切らない様に注意深く回収した。
(写真4、付図1参照)

 2.4.2飛行の経過
 事故に至るまでの経過は、機体に装備されたフライトコンピュータに残されたログおよび機長の口述によれば、概略次のとおりであった。

 事故当日の午前10時前ごろ現場に到着し、機体のチェックを行ったが同機に異常は認められなかった。体感的に風速1~2m/s程度の微風と感じた。野焼きの煙もほぼ真上に上昇していることから静穏であると判断した。電源投入を行いGPSの測位を待ち、測位完了後にアーミング(準備完了動作)した。フライトモードはスタビライズモードにした。左手に送信機を持ち親指でスロットルを全開の位置に保持した。音と機体に伝わる推力感からモータが最高回転数で回転していると感じたので機体を右手で持って磁方位300度の方向へ水平に手投げした。
 手投げ後は水平飛行を続けて居たので、送信機を両手で保持しなおしてエレベータを上昇側に操作して目測で30m程度まで高度を獲得した。その間にピッチ方向の不安定さは感じなかったが、ロール方向には若干の過敏さを感じた。
 当該飛行の目的は試験飛行で有ることから、上空では左右の旋回を試みた。旋回方向や旋回半径を変えて数回の旋回を行ったが、スロットルを中開度にするとロール方向が不安定になる事が有った。スロットルを中よりもさらに低開度にすると機体は極度に不安定になって小さな半径で旋回を行った。機首下げは無いが初期のターニングストールに近い動きであると感じた。
 その後も速度を変えて機体の挙動を探っていたが、急に小さなスパイラルダイブ的な状態になった。エルロンを機体の傾きと逆方向に操作し、エレベータを上昇方向に操作したが全く舵が効かずに墜落した。後で考えれば失速後はエレベータをダウン方向に操作すべきだが、その時は失速に見えずにスーッと降下する様な奇妙な感じだった。
(付図1、2参照)

3事実を認定した理由
 3.1事故現場周辺の地形状況から、事故現場においては不規則な気流は発生しにくいと推定される。また当日の気象状況からも気象条件が要因では無いと推定される。

 3.2機長の口述およびフライトログから、同機は8m/s以上の速度で飛行中は安定した状態で飛行している。しかし飛行中の不意な旋回が発生した時や墜落直前には同機は5m/s程度まで速度が低下していた。同機は試験機の初飛行で有るために失速速度が明確では無いが、類似した機体や翼面荷重から推測される失速速度は5m/s程度で有り、不安定な挙動は失速が原因であると推定される。

 同機は明確な垂直尾翼を有しておらず、ヨー軸の安定のため主翼前縁に14度の後退角を有している。また製作を容易にする目的で翼端のねじり下げは無い。これらは一般的に翼端失速の発生しやすい空力的な形状で有る。また翼端失速に対処する操縦法として自転と反対方向のラダーペダルを強く踏み込む事が一般的であるが、同機はラダーが無い為にこの回復操作が不可能である。

 同機は自立飛行を目的とした試験機で有るためフライトコントローラを有している。事故時は本フライトコントローラのスタビライズモードで飛行中で有った。スタビライズモードはピッチ軸とロール軸のみを現状維持で自動制御するが、速度やスロットルは関知しない為に失速直前まで電子制御された水平飛行を維持しようとする。そのために機体の姿勢変化から種々の情報を得る事が困難であると推測される。

 同機のロール軸廻りの操縦系統は特殊であり、主翼上面に突出するスポイラーを左右単独で操作する事により行う。これは一般的なエルロンを用いた場合に問題となるアドバースヨーが発生しないが、主翼の揚力を失わせる事によって操縦するために、既に揚力を失ってしまった失速状況下等では著しく操縦性が劣る可能性が考えられる。さらに同機は初飛行で有るために、設計者・操縦者ともにこの特性に不慣れで有ったと推定される。

4原因
 機体の損壊状況及び機長の口述およびフライトログデータから、本事故は試験飛行で有ったことから、同機が一般的な航空機に求められる安定性を欠いた可能性が有った事。操縦者が特異な操縦性に慣れる間が無かった事。設計者にスポイレロン方式への確実な知見が不足していた事、などが要因であると考えられる。

12293  写真1






12294  写真2






12295  写真3






12296  写真4






12291  付図1









12292  付図2




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コメント

微小インシデント!笑

投稿: MASA | 2020年12月30日 (水) 11時19分

 このくらい壊れたらインシデントでは済まんと思う(笑)。

 昨日のうちに修理と改造して、胴体の新作と翼端上反角付けたけど雪が降って飛ばしに行けん。

投稿: みつやす | 2020年12月30日 (水) 13時13分

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