GT380のレギュレータ
特定の年代層なら「サンパチ」で通じるスズキのオートバイ。そのレギュレータの話。ネットで見るとGT550とかGT750と共通の様に書いてあるページもあるけど、所有してた訳じゃ無いのでこれがオリジナル品という保証は無い。
修理で入ってきたけど妙に新しい。未だに部品が出るのか?若しくは汎用品を付けたのか?等と思いながら分解した。中身も新しかった。そしてトラブルは低速接点の溶損だった。
ここまで痛んでいると隣青銅の板バネとセットで交換するしかない。8,000円位ですかねえ・・・と連絡して作業を始めたら大変な品物だった。
接点の交換作業自体は何回もやっているので問題はない。そして簡易セットで大まかな調整を始めたけど全く調整が出来ない事に気がついた。
そう言えば最初に分解したときも、フレームに固定してある方の接点が2本とも大きく傾いていた。風に揺れる竹林のように。開けた形跡は無いのに妙な感じを受けたけど、妙な感じが現実の物に成りつつあった。
リレーとボルテージレギュレータは大筋では同じ物だけど、磁気回路的には使用するゾーンが全く違う。
例としてリレーの場合、12Vでオンに成るヤツをオフにするには、6V以下まで印加電圧を下げる必要が有る。機械で言えばオーバーセンタと言うか死点越えのリンクに近い。
もしレギュレータにリレーのようなヒステリシスが有ったら使い物に成らない。たとえば電圧が15Vに成ってカッチンと発電停止モードに成った場合、10秒後に13Vまで電圧が下がってもモードは変わらない。次に発電モードに成るのは6Vまで電圧が下がった時・・・。これでは困る。
その為にレギュレータでは、電流(電圧)による磁力と、バネによる反力(移動鉄心の位置)がリニアに釣り合っているゾーンを使う。
13Vよりも14Vの方が少しだけ鉄心が引きつけられ、15Vに成ったら更に引きつけられる。そして14Vに下がったら以前の14Vの位置まで戻る。そんなゾーンの途中に2-3個の接点を配置し、数段階にフィールドコイル電流を制御する。
長くなったけどここまで書いておかないとこのレギュレータの異常さは伝わらない。このレギュレータの磁気回路はリレーその物だった。ザーッと見ただけではまともなレギュレータに見えたけど、詳細に見ていくとリレーの磁気回路に成るような寸法や配置だった。
具体的には、低速接点が離れた瞬間に高速接点まで一瞬でカチッと移動してしまう。中間の制御が全く出来ない。そして移動してしまった高速接点を引き離すには、印加電圧を4V!!まで下げないと駄目。
最初は悩んで調整を繰り返したけど、途中で基本構造がおかしいことに気がついた。そこで移動鉄心の位置とか形状をかなり弄り、ヒステリシスのないリニアなゾーンで動作出来るように改造した。
改造前のこのレギュレータの動作を考えてみる。低速接点に強く押し当てる様な調整がしてあれば、何時まで経っても低速接点が閉じたまま。結果的にフィールドコイルには最大電流が流れ続ける。
低速接点は過熱気味に成り、フィールドコイルも過熱気味に成る。どちらも限度を超えたら焼損の可能性が有る。そして電圧はノーコンで最大発電モードなので、回転を上げたら過充電に成る。
上記とは逆に15Vで高速接点が閉じる場合、エンジン始動直後は大きな問題は無い。充電が進んでバッテリー電圧が上昇し、ある段階で電圧が15Vに達したらそこでお終い。高速接点が閉じてフィールドコイルの電流をゼロにしてしまう。結果として発電はゼロに成る。
発電がゼロだから後はバッテリーの持ち出しに成る。しばらくは走るけどじきに調子が悪くなったりライトが暗くなる。最悪は止まる。
止まる前にキーを一旦切った場合、高速接点がリセットされるので振り出しに戻る。そしてバッテリーが満充電に成るまでは何となく正常みたいな動作を行う。。。
こんな状態を普通のトラブルシューティングで見つけられる訳がない。とんでも無い状態だと思う。
どうして中古車の調子の悪いレギュレータに関して、ここまで長文を書いたかというと嫌な雰囲気を感じたから。
最初に書いたように新品を少しだけ使ったようにしか見えない。電線とかチューブとかも新しい。電流制限抵抗もほとんど焼けてない。内部の部品の状態も新しい。移動鉄心関係を弄った形跡は無い。カバーの封印もオリジナルの状態のように見える。
要はメーカから出た段階からこの状態だったような気がするわけだ。電圧が狂っているという生やさしい状態ではなくて、あり得ないような配置できっちりと作ってあるという。。。
1個だけなので何とも言えないけれど、マーキング通りにND製だとしたらデンソーのブランドも地に落ちた物だと思うし、勝手に真似して作られた物であっても、最低限の機能はするように作れよ!と怒りを覚える。
何となく妙な雰囲気を感じたので長々と書いたけど、このタイプのレギュレータで訳の解らないトラブルを抱えて居る人は注意した方が良いような気がしている。
昨日までの風邪?が少しだけ残っていて、今日までは運動を控えようと思った。畑のいちごが最盛期なので箱を用意してなまずの郷に持っていった。人が走っているのを見ると自分も走りたくなる。
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コメント
多分 何処かの怪しい 再販品ですよ!!
オクで時々 やたら安く売ってるもの。。
当時物とかそれらしく売るなら、、
姑息な奴め!! とか思うけど、、
完全互換品とか 立派に書いてるから
質が悪いですよ!!
もう少し高く見積もって(適正価格で)
ケースそのまま IC化してあげたほうが
良心的かも。。
投稿: MASA | 2013年5月16日 (木) 01時16分
可動鉄心の曲げ角度とか先端の反り具合とかに重要な意味があるのですが、その辺りが全く考慮されて無いんです。分厚い鉄板なので後で弄ったら確実に傷がつくので出荷段階からこうだった可能性が高いです。
他社による劣化コピーなのか、製作会社の質が極端に落ちたのか、低レベル商社員と化したデンソー社員が汚いFAXを今までと違う外注先に投げて作らせたのか?
杞憂に終われば良いのですが、何となく嫌な感じがします。
投稿: みつやす | 2013年5月16日 (木) 08時18分
リレーとレギュレーターの動作領域について書かれてましたので出しゃばります(笑)
若いころ無線と有線を取り持つ交換機の仕事をかじった時に継電器の奥の深さに感動
高速・遅延・ヒステリス色々を電磁コイルとばね(コイル・板・リード)で動く事に
特に、電磁コイルの外周に銅のショートリングを付けることで接と断の特性を操る技
付ける位置と幅についての技が失われているいることは残念です。
投稿: 山向こうの住人 | 2013年5月16日 (木) 12時00分
交換機ってリレーの固まりですねえ。今は、流石に違うとは思いますが??
銅のリングでそう言ったコントロールが出来るのを初めて知りました。ジャンク品でその手のリレーが有ったら、色々と弄って試してみたいです。
投稿: みつやす | 2013年5月16日 (木) 12時28分
いつも頼りにされておられ、何よりですね。サンパチの電子部品の依頼もありましたか! こちらホンダCL350なんですが、セレン整流器はついてますが、レギュレーターが付いてません。成り行き任せの充電回路でしょうか?o(^-^)o
投稿: ラ・モート | 2013年5月16日 (木) 18時19分
あの時代のセレンなら赤い板でしょうか?まだ生きていたら大した物ですね。
上下の川が細くてダムが大きければ、溢れにくいし涸れにくい。大陸的な大らかさを感じる思想です(笑)。
投稿: みつやす | 2013年5月16日 (木) 19時10分
こんばんは、GT380のレギュレータの件興味深く読ませていただきました。
まさに今、GT380(逆輸入車)にて若干の過充電で色々と調べている所でした。
今のところある程度の距離を走っても
球切れやバッテリー液が吹くまではありませんが
平均電圧15v強で16vを越えることも多々あり、
新品の同じく日本電装製のレギュレータに交換しましたが
今度は平均電圧が16v前後と以前より上がってしまいました。
販売店を通しスズキに問い合わせてもらうと、
この車では平均よりも電圧が上がるが問題は無いとの返答でした。
実際のトコロ平均15v~16vは大丈夫な範囲なのでしょうか?
ライト等は不安無くとても明るいのですが…
(車検も一発OK)
結局元のレギュレータに戻しました。
自分もこの件で日本電装製のレギュレータに疑問を抱かずにはいられませんでした。
新品でも個体によって差があるようですし……
ちなみにいちばん最初に付いていたレギュレータは国産電機製でした、
(ゴールドのケースのタイプ)
内部の作りは各接点が調整出来るようになっており
かなり手の込んだ作りでしたが現在は製廃になっております。
投稿: ヒロ | 2013年11月 1日 (金) 00時24分
機械式のレギュレータで精度良く制御する事は困難で、当時の整備書では十分にエンジンが回転している時のバッテリー電圧が14V~15Vくらいです。現実もこの位にしか調整が出来ないことが多いです。
鉛蓄電池の充電電圧は、サイクル使用時でも14.5Vくらいがメーカの推奨値です。
また、自動車用電球のJISに依る印加電圧は13.2Vとか13.5V辺りが多いです。これは14V台のバッテリーから配線や接点の電圧降下を考慮した値と思われます。これより電圧が高ければ明るいけど寿命は短く成ります。
自分自身の経験からも、15Vを超えると球切れが多くなります。
バッテリー点火のレース車両で、コイル印加電圧を高くしたい様な凄く特別の理由が無い限り、15V以上を許容するのはおかしいと思います。
メーカからの回答の件ですが、メーカにも色々な人が居ます。販売店を相手にしている地方支店の部品課の主任辺りが適当に答えただけかも知れません。
私も地方の変なオヤジなので(笑)信頼性は同じくらいですからご自分で色々と調べて見てください。調べれば調べるほど15V以上を許容する回答はおかしいと感じられる筈です。
投稿: みつやす | 2013年11月 1日 (金) 08時36分
みつやす様
早速のご回答ありがとうございます。
やはそうですよね、おかしいですよね。
今は電圧計を取り付けて監視状態で走っています。
会社のHPも拝見させていただきました。
このブログも含め為になることが沢山書いてありとても勉強になりました。
場所もとても近いようで、今後お世話になる事があるかもしれませんが
その際にはよろしくお願いいたします。
投稿: ヒロ | 2013年11月 1日 (金) 19時32分
お近くの方でしたか。じゃあ気軽に遊びに来てください。
赤木峠経由だと、サンパチは直ぐにステップ擦りますからご注意を。ステップじゃなくてスタンドだったかな?
投稿: みつやす | 2013年11月 1日 (金) 20時16分